番外編 崩れ行く聖地 ~終盤~その2

マルチェロは、信じ難いとした表情でエイト達を見ていた。
マイエラで会った時は、こんなには強くは無かった筈だ。
悔しさと、敗北感が胸を焦がした。
「何だと・・・・!!この私が・・・」
言いかけた。
心が、いう事を全く聞かなくなっていた
同時に身体も。
誰かに操られているかのように。

エイト達に、沈黙と緊張が走った。
思わず息を呑む程。
目の前に居るのは、マルチェロではない。
髪は、白髪で、邪悪な気配が辺りを佇んでいた。
観客達は、皆その邪気に圧倒され、精神まで侵された。
吐き気と、眩暈を訴え、次々と倒れていく。
まともに居れるのは、エイト達だけだったかもしれない。
「あに・・・・・・・つぅ・・・・」
女神像にぶつかって、折れた腕を押さえながら立ち上がった。
頭がふらふらする。・・・・・貧血か・・・・・。
もうちょっとだけ・・・・耐えてくれ・・・・。
祈るような気持ちで、腕を押さえる手に力をこめた。
「喋らないで。傷が開くわ。」
ゼシカが折れていない方の腕を引っ張り、座らせた。
杖を傷口に翳し、意識を目一杯集中させる。
癒しの力が集まり、傷は少し塞がった。
「・・・・・どう・・・・・?」
痛みは治まらないが、こんな事を言えば失礼に繋がる。
強がって、大丈夫だと答えた。

マルチェロは、奇妙な笑いを浮かべ、エイト達に向き合った。
「・・・・・エイト・・・礼を言うぞ。お前らが現われなければ、我がの封印は解けなかった。」
そして、空高く飛び、宙を舞った。
それは、人間とは思えない行為だった。
杖を女神像に掲げ、両手を広げた。
「さあ!我がの肉体を取り戻せ!!」
杖を、女神像の胸に突き刺した。
そこから罅割れ、広がっていき、瞳に妖しい光が宿った。
そして、女神像や、神殿が脆くも崩れ去っていく。
地面に大きな穴が開いた。
人々は、飲み込まれるかのように、穴の中に落ちていった。
落ちれば、命は無いだろう・・・。
危険を感じたエイト達は、すぐに神鳥の魂を取り出した。
しかし、叶わず、爆発に巻き込まれ、高い神殿から転落した。
長い長い空気の切る音が聞こえ、都市に着いた。
逃げ惑う人々が目に入り、意識は途絶えた。

神殿は舞い上がり、紫色の光が神殿に宿った。
最早神殿と言える代物ではない。
それは、悪魔が住む・・・・紛れも無く、城だった。
城は、青空を舞い、聖地を電流で埋め尽くした。
意識を失ったエイト達は、わざとに電流を当てなかった。
電流は軌道を描き、波の様に襲い掛かってきた。
人々の半分は、電流に焼け尽くされたりし、犠牲者は多かった。

電流が収まった後、今度は、青空を血の色に染めた。
青々とした大空は跡形も無く消し去り、真っ赤な鮮血のような空が広がっていた。
人々は、その空を見据え、無性に不安を覚えた。
短かったが、城は空の色を戻し、何事も無かったかのように去っていく。
意思を持っているかのように・・・・。

エイト一人、気がついた。
「此処は・・・・・・?」
崩壊した聖地は、最早聖地ではなかった。
地獄絵図のような代物だ。
朧気に呟き、歩を進めた。
目線を、大穴に向けると、マルチェロが、橋にしがみ付いているのが目に入った。
気が付き、エイトは駆け寄った。
しかし、手を離してしまい、大穴に吸い込まれる。
エイトの傍らに、風が吹いた。
疾風の如く、ククールが、兄の手を掴んでいた。
怪我は二人とも重い。
何とか兄を支え、折れていない方の手で、掴んでいる。
体重を重心にし、何とか落ちない。
マルチェロは、睨みつける。
淡々と言う口は疲れ切っていた。
「離せ・・・・貴様らが邪魔をしなければ、暗黒神の力は手に出来たのだ・・・。
だが、全ては終わった!」
手を強引に引き剥がし、穴に吸い込まれた。
が、更に手を伸ばし、兄の手を捕まえる。
「・・・死なせはしないさ・・・・。」
小声で呟き、兄に何とか行き届いた。
更に声を強め、怒りを込めた口調で言った。
が、その中には淋しさも入り混じっていた。
「あんたが虫けらの様に扱っていた弟に情けを掛けられ、惨めに生きるんだ。
好き放題やらかして、そのまま死のうなんて、許さない。」
片手に力を込め、引き上げた。
荒い息を吐き、尻餅を付く。
マルチェロは、地面を一回叩き、罵声を上げた。
ククールが立ち上がる。
「この上・・・恥をさらせ・・・だと・・・!!貴様は・・・」
鬼のような目に変わったが、ククールは顔一つ変えない。
しかし、淋しさに溢れた顔は、消せなかった。
「十年以上前だよな・・・・。一番初めに話し掛けたのはあんただった。」
今まで、兄を真っ直ぐ見つめた事は無かった。
だからだろう。皆に尊敬された兄が、小さく見えたのは、今まで無かった。
そして、すぐに俯き、幼い頃のあの日を語った。
「知り合いも、家も、家族も居なくて、一人ぼっちだった。けれど、あの時優しく声をかけたのは、紛れも無くあんただった。
あの時は、優しかった。名前を言う直前まで。俺が名前を言った瞬間、掌を返すような態度をとられたけど・・・
それでも・・・・・それでも俺は、忘れた事は、無かったよ。」
ククールが外方を向き、顔を合わせ無かった。
マルチェロが立ち上がり、鮮血が噴き出してる腕を庇いながら、問う。
「いつか・・・・私を助けた事、後悔するぞ。」
迷う事無く、言った。
「好きにすればいいさ。また何かやらかしても、何度だって止めてやる。」
無言で、その場から立ち去ろうとした。
エイト達の痛い視線を浴びながら、指に嵌めてあった指輪を取り出す。
そして、軽く投げる。
気が付き、それを受け止めた。
貧血により、手が小刻みに震えるが、これが何か分かった。
「これ・・・・あんたの聖堂騎士団長の指輪・・・・。」
特別な者でないと与えられない物だ。
無言で、マルチェロが去っていった。

痛いほどの沈黙が辺りを包み込んだ。
やる事は分かっていた。
暗黒神の野望を止める事。
「・・・ククールの傷が酷い。まず、海辺の教会に行かないと。」
そこは、料金無料なので、旅人には親切だった。
転移呪文で、海辺の教会へと向かった。

ベットに横になると、疲れた体が安堵する。
ククールは、既に寝入っており、寝息をかいていた。
ベットには、聖堂騎士団長の指輪と、髪のリボンが置いていた。
貧血によって、体力を激しく消耗させたのだろう。
ゼシカも、ウトウトと、目の焦点を彷徨っていた。
ヤンガスは鼾をかいて寝ていた。
「・・・・ゼシカ・・おやすみ・・・・。」
「うん・・・・・・エイト・・・・・・おやすみ・・・・・・。」
消え入りそうな声が聞こえた。

明日がようやく、暗黒神との決戦だ。
生き残るか、死ぬかの問題だ。




2008年08月20日 Posted byチャッピィーのドラクエ日記 at 19:17 │Comments(0)TrackBack(0)小説番外編

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